90時間で1,230qを走る、長距離サイクリングイベント「パリ・ブレスト・パリ」を追う

2015/09/02

90時間で1,230qを走る、長距離サイクリングイベント「パリ・ブレスト・パリ」を追う

90時間で1,200q、走りきれますか?世界最大のロングライドイベント「パリ・ブレスト・パリ」をご紹介します。

4年に一度の、1,200qを超える長距離サイクリングイベント「パリ・ブレスト・パリ」(以下、PBP)。200q以上の規定の距離決まった時間内で走る「ブルベ」の最高峰とされるこのイベントに、世界58カ国から約6000人が集結。8月16日から5日間、90時間かけてパリからブレストまでの往復1,230q完走を目指すサイクリストたちを追いました。

(写真:パリ中心地から25q離れた町サン=カンタン・アン・イヴリーヌからスタート! 16時00分にスタートし80時間での完走を目指すグループと、17時00分以降のスタートで90時間以内を目指すグループ、深夜の走行を避けるため17日5時にスタートし84時間での完走を目指すグループに分かれます。)

PBPは、1891年に、自転車を世に広めるためにフランスの雑誌社によって主催された世界で最も歴史の長い自転車イベント。200q以上のロングライド「ブルベ」の最高峰イベントであり、出場するためには、開催の年に200q、300q、400q、600qのブルベを制限時間内に完走していることが必須です。その難関を達成した「シューペル・ランドヌール」(フランス語。英語は「スーパーランドナー」)のみ参加できるため、世界中のサイクリストにとって憧れの大イベントとなっています。


(写真:多くの参加者が、国や地域名、その地域の象徴がデザインされたウェアを着ていてカラフル! 参加者の約70%が40〜50代に集中し、30代と60代が15%ずつと、年配の方がとても多いPBP。自転車が生涯スポーツであることを実感します。)

PBP完走の称号を得るには、パリ・ブレスト間約600qの往復、計1,230qを自分が選んだ制限時間以内にゴールしなければいけません。道半ばには、パンクなどの自転車トラブルや、天候悪化による体力の消耗、夜間走行の低体温症や日中の熱中症、ハンガーノックなど、さまざまな困難が降りかかります。そして、ほとんどの参加者が苦しむのが睡眠不足。そのすべてに自力で対応するのがPBPの難しさであり、また面白さでもあるのです。 途中に設けられた15のチェックポイント地点(フランス語を略すとPC)以外では、参加者以外のメンバーから助けを借りることができないので、エネルギー補給食、防寒具、修理アイテムなど、何が必要で何が不要かを判断して持ち物を決めることが大切。PCには食堂や仮眠スペースがあり、近くのホテルに泊まることもできます。各PCに設けられた通過制限時間をクリアしながらも、90時間内で睡眠をいつどこで何時間とるのか、緻密なタイムスケジューリングが完走のカギを握るのです。

(写真:世界中の自転車好きが熟考を重ねた“完走のためのアイテム”を装備させているため、自転車を眺めているだけでも面白い。)

さまざまな言語が飛び交うPBP。各々のペースで完走を目指しながらも、スピードの合う外国人仲間を見つけて一緒に走れるのも、PBPならではの経験です。チームで参加しているサイクリストグループについていかせてもらったり、休憩中に情報交換してお互いの健闘を称え合ったりと、“競争”ではなく、“完走を目指す”という、「ブルベ」ならではのあたたかさがあります。

サイクリスト以外でも、PCには地元のボランティアスタッフが常駐し、応援に駆けつける地元の方もたくさんいます。また、参加者をサポートするチームメンバーや家族が、キャンピングカーや自家用車でPCのある小さな町に集まり、ホテルはどこも満室に。

(写真:パリまで140qのPC地点、モンターニュ=オー=ペルシュ。地元の方が「ブラボー!」とあたたかい声援を送ってくれます。道中では、早朝・深夜にかかわらず、水やコーヒー、ケーキなどを無料で提供してくれる地元の方がたくさんいます。そうした「私設エイド」での交流はPBPの醍醐味といわれています。)

PCのある町は、町全体がサイクリストのサポート場となり、緊張感と高揚感が充満していきます。スーパーに食材を買い出しに行く参加者の家族や、ホテルのロビーでスケジュールを確認するチームメンバーなど、まさに、町にいるみんながPBP関係者。「(サポートしている)あなたのサイクリストの調子はどう?」という会話が、自然と生まれていきます。パリから450qの町・ルディアックで出会ったホテルスタッフは、「この2日間は徹夜だよ」と、疲れをにじませつつ、うれしそうな表情を浮かべていました。

(写真:各PCにボランティアスタッフが日夜問わずスタンバイ。その数、総勢2,500人!PCでは食事の提供や、救護室の受付、ブルベカードのスタンプ押印などを行ってくれます。「4年に一度の大イベントなんだから、ボランティアをやらないともったいないよ!」、そう話す年配のスタッフがたくさんいました。)

約200人の日本人が参加した2015年の第18回大会。完走できた人もできなかった人も「アレ!ジャポン!(行け、日本!)という声援に感動した」「ブレストの景色の美しさが忘れられない」「一緒に走ってくれたサイクリストに背中を押してもらった」などと口ぐちに思いでを話し、PBPが持つあたたかい雰囲気に魅了された様子。 次のPBPは2019年。いまから出場を目指したい! という方は、1,230qを自分の力で走り切るという壮大なゴールに向け、まずは国内のロングライドイベントやブルベから。走れる距離が少しずつ伸びていく、シンプルな喜びがそこにあるはずです。

【筆者紹介】:

田中瑠子

ライター・編集者。スポーツからビジネスまで人物インタビューを多く手がける。2014年、ホノルル100マイルを走って自転車の世界を知る。下り坂でブレーキをかけまくるのが昨今の課題。

関連記事:

ヴィンチェンツォ・ニバリが乗ったS-WORKS ROUBAIXの実車、あります(2014年12月10日)

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4年に一度の、1,200qを超える長距離サイクリングイベント「パリ・ブレスト・パリ」(以下、PBP)。200q以上の規定の距離決まった時間内で走る「ブルベ」の最高峰とされるこのイベントに、世界58カ国から約6000人が集結。8月16日から5日間、90時間かけてパリからブレストまでの往復1,230q完走を目指すサイクリストたちを追いました。

(写真:パリ中心地から25q離れた町サン=カンタン・アン・イヴリーヌからスタート! 16時00分にスタートし80時間での完走を目指すグループと、17時00分以降のスタートで90時間以内を目指すグループ、深夜の走行を避けるため17日5時にスタートし84時間での完走を目指すグループに分かれます。)

PBPは、1891年に、自転車を世に広めるためにフランスの雑誌社によって主催された世界で最も歴史の長い自転車イベント。200q以上のロングライド「ブルベ」の最高峰イベントであり、出場するためには、開催の年に200q、300q、400q、600qのブルベを制限時間内に完走していることが必須です。その難関を達成した「シューペル・ランドヌール」(フランス語。英語は「スーパーランドナー」)のみ参加できるため、世界中のサイクリストにとって憧れの大イベントとなっています。


(写真:多くの参加者が、国や地域名、その地域の象徴がデザインされたウェアを着ていてカラフル! 参加者の約70%が40〜50代に集中し、30代と60代が15%ずつと、年配の方がとても多いPBP。自転車が生涯スポーツであることを実感します。)

PBP完走の称号を得るには、パリ・ブレスト間約600qの往復、計1,230qを自分が選んだ制限時間以内にゴールしなければいけません。道半ばには、パンクなどの自転車トラブルや、天候悪化による体力の消耗、夜間走行の低体温症や日中の熱中症、ハンガーノックなど、さまざまな困難が降りかかります。そして、ほとんどの参加者が苦しむのが睡眠不足。そのすべてに自力で対応するのがPBPの難しさであり、また面白さでもあるのです。 途中に設けられた15のチェックポイント地点(フランス語を略すとPC)以外では、参加者以外のメンバーから助けを借りることができないので、エネルギー補給食、防寒具、修理アイテムなど、何が必要で何が不要かを判断して持ち物を決めることが大切。PCには食堂や仮眠スペースがあり、近くのホテルに泊まることもできます。各PCに設けられた通過制限時間をクリアしながらも、90時間内で睡眠をいつどこで何時間とるのか、緻密なタイムスケジューリングが完走のカギを握るのです。

(写真:世界中の自転車好きが熟考を重ねた“完走のためのアイテム”を装備させているため、自転車を眺めているだけでも面白い。)

さまざまな言語が飛び交うPBP。各々のペースで完走を目指しながらも、スピードの合う外国人仲間を見つけて一緒に走れるのも、PBPならではの経験です。チームで参加しているサイクリストグループについていかせてもらったり、休憩中に情報交換してお互いの健闘を称え合ったりと、“競争”ではなく、“完走を目指す”という、「ブルベ」ならではのあたたかさがあります。

サイクリスト以外でも、PCには地元のボランティアスタッフが常駐し、応援に駆けつける地元の方もたくさんいます。また、参加者をサポートするチームメンバーや家族が、キャンピングカーや自家用車でPCのある小さな町に集まり、ホテルはどこも満室に。

(写真:パリまで140qのPC地点、モンターニュ=オー=ペルシュ。地元の方が「ブラボー!」とあたたかい声援を送ってくれます。道中では、早朝・深夜にかかわらず、水やコーヒー、ケーキなどを無料で提供してくれる地元の方がたくさんいます。そうした「私設エイド」での交流はPBPの醍醐味といわれています。)

PCのある町は、町全体がサイクリストのサポート場となり、緊張感と高揚感が充満していきます。スーパーに食材を買い出しに行く参加者の家族や、ホテルのロビーでスケジュールを確認するチームメンバーなど、まさに、町にいるみんながPBP関係者。「(サポートしている)あなたのサイクリストの調子はどう?」という会話が、自然と生まれていきます。パリから450qの町・ルディアックで出会ったホテルスタッフは、「この2日間は徹夜だよ」と、疲れをにじませつつ、うれしそうな表情を浮かべていました。

(写真:各PCにボランティアスタッフが日夜問わずスタンバイ。その数、総勢2,500人!PCでは食事の提供や、救護室の受付、ブルベカードのスタンプ押印などを行ってくれます。「4年に一度の大イベントなんだから、ボランティアをやらないともったいないよ!」、そう話す年配のスタッフがたくさんいました。)

約200人の日本人が参加した2015年の第18回大会。完走できた人もできなかった人も「アレ!ジャポン!(行け、日本!)という声援に感動した」「ブレストの景色の美しさが忘れられない」「一緒に走ってくれたサイクリストに背中を押してもらった」などと口ぐちに思いでを話し、PBPが持つあたたかい雰囲気に魅了された様子。 次のPBPは2019年。いまから出場を目指したい! という方は、1,230qを自分の力で走り切るという壮大なゴールに向け、まずは国内のロングライドイベントやブルベから。走れる距離が少しずつ伸びていく、シンプルな喜びがそこにあるはずです。

【筆者紹介】:

田中瑠子

ライター・編集者。スポーツからビジネスまで人物インタビューを多く手がける。2014年、ホノルル100マイルを走って自転車の世界を知る。下り坂でブレーキをかけまくるのが昨今の課題。

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