2019.01.16

スペシャライズド「ツール・ド・おきなわ」チャレンジ Vol.4

スペシャライズド社員のツール・ド・おきなわ市民140kmレースへの取り組みを紹介する連載の第4回。

市民210kmでは見事に紺野元汰さんが優勝を果たしましたが、おじさんたちの結果はどうだったのか。それぞれのレースを振り返ります。

Vengeでツール・ド・おきなわ優勝!紺野元汰さん独占インタビュー!

スペシャライズド「ツール・ド・おきなわ」チャレンジ Vol.1>
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●最終関門で足切りにあった小松
小松の結果:市民140km DNF

ーまずはみなさん、おつかれさまでした。今回は三者三様のチャレンジだったわけですが、初めての本格的なサイクルロードレースとなった、小松さんのレースから振り返っていただけますか。

小松「結果から言うと完走することはできませんでした。序盤はパックで走ることができたけど、中盤以降はずっとひとり旅。羽地ダムの登りで後ろからパトカーがやってきて、「最終ライダーは通り過ぎました。規制を解除します」と言いながら追い抜かれました。ああ、終わったんだと。最後の135kmの関門で降ろされました」

ー当日に至るまでの体調などはいかがでしたか。

小松「実は前立腺炎になってしまい、コンディションが落ちてしまって、それを取り戻すだけで精一杯だったかなと思います。もちろん技術的なこともやりたいと思い、この3人で練習会もやったのですが、ペースについていくことができない。完走は難しいかもしれないなとは、思いました」

—レース中に感じたことは。

小松「レース本番までにはなんとか体調も回復しましたが、いざレースがスタートしてみると、レーサー(選手)は速いなあと思いました。瞬発力があるし、下りも速い。トライアスロンのバイクとはまったく違う競技だということは実感しましたね。トライアスロンは、登りは頑張らないわけです、そのほうが速いから。でもそのやり方では、ロードレースではついていけない。そして、下りのラインどりがみんな上手ですね。後ろから見ていて、とても参考になりました。また、集団で走ることができている間は、ロードレースをやっているんだという実感があって、それは楽しかったです」

—レースを終えて、どんなことを考えましたか。

小松「翌日にみんなでファンライドを行なったのですが、そのときに強い人たちと話をして、彼らの考え方や技術、トライアスロンとロードレースの違いなどについて聞きました。それが、とても面白かったんです。そして自分も、そこに真摯に向き合っていきたい、中に入りたいと思いました。来年も、市民140kmに出ようかなと思っています」

佐藤と渡辺のレース当日のデータをiPhoneで見た小松は「トライアスロンはここまで心拍上がらないんだよな」とひとこと。トライアスロンとロードレースの違いを改めて実感。

 

●現在の実力を出し切るという目標は達成できた渡辺
渡辺の結果:市民140km 185位
タイム 4:48:13.153
ギャップ 55:06.142
Ave 29.14km/h

—続いて渡辺さん。結果はいかがだったでしょうか。

渡辺「ふつうに走ることができれば完走もできるだろう、今の実力を出し切ろう——という目標は、達成できました。タイムも、以前(2016年)に市民140kmに参加したときよりも6分短縮できました」

—前回のインタビューからレース前までは、どんなふうにトレーニングをされていましたか?

渡辺「前回お話ししたように筋肉をつけないように注意しつつ、登りの練習に力を入れていました。レース本番の1週間前からは練習をしなかったのですが、それはちょっと余裕をもちすぎたかもしれません」

—レース当日は、どんな走りだったのでしょうか。

渡辺「当日の朝、ホテルからスタート地点まで30kmほどあるのですが、小松さんといっしょに自走で向かいました。ただ、早めに行ったつもりですがすでにスタート前には人がいて、並ぶのが少し後ろになってしまいました。このとき、もっと前に並んでいればよかった。途中で中切れの影響を受けたのは、スタート位置のせいもあると思います」

—そこはもっと、図々しく行ったほうがよかったかもしれないですね。

渡辺「そして、実際にレースが始まると、最初の登りで今まで攣ったことがないところが攣ってどうなるかと思ったのですが、それでも今までの登りのトレーニングが効いていたのか、登り区間が短く感じました」

—まさに練習の成果が出ていますね。

「その後のアップダウンの繰り返しでもまわりがよく見えていましたね。このときには小さな集団になっていたのですが、どこまで追い上げられるかなと思いつつ回していると、2回目の登りでひとつ前の集団に追いつくことができました。このときは自分たちのいた集団が盛り上がったのを覚えています。ただ、そこから先は足が攣り、足切りに合わないように走るのが精一杯でした。ゴールした後は、まったく動けない状態。自分なりに出し切ったとは言えますね」

—練習の成果が出て、実力を出し切れたと感じる一方で、もっとこうすればよかったということはありますか?

渡辺「レースという位置付けではなかったのは、反省点ですよね。順位を求めるなら、スタートからもっと前にいなくてはならないですし。レース中の走り方の面では、例えば集団の中で少し休むとか、抑えるところは抑えるといった余裕はありませんでした。出し切りたいという気持ちと、とはいえラクできるところはラクをしたいという葛藤があり、とはいえ完走しないと意味がないので、難しかったです」

—2回目の140km完走を果たしたわけですが、来年は、どうでしょう!?

渡辺「今回は実質的にお盆前からおきなわを意識したトレーニングを始めて、3ヶ月でこの結果でしたが、ちゃんと取り組めば目標をクリアできることは、わかりました。レース後、沖縄に少し長居をして200kmをサイクリングしました 。それで距離に対する感覚はつかめたので、来年は、市民210kmを目指したいという気持ちも出てきました」


©Makoto Ayano, Cyclowired

●オーバーワークで体調を崩すもなんとか完走を果たした佐藤
佐藤の結果:市民140km 182位
タイム 4:46:32.785
ギャップ 53:25.774
Ave 29.31km/h

—佐藤さんは今回、RETUL FITを受けトレーニングコーチもお願いし、春から精力的に取り組まれていましたが、結果はいかがでしたか?

佐藤「当初の目論見は50位以内、あわよくば30位以内と思っていました。でも、そんなに甘くないというのが、結論ですね。結果は182位でした」

—何があったのでしょう。

佐藤「レース本番の3週間前、体調に異変を感じたんです。しかし、距離を乗らなくてはという気持ちが強く、そのまま乗り続けていました。10月は1,200km乗ったのですが、結果として、たたってしまった。レース本番2週間前から変な咳が出始めて、丸10日間は自転車に乗ることができず、なかばぶっつけ本番のようなかたちでレース当日を迎えたんです。さすがに、今まで経験したことがないパターンでした」

—レース当日までに体調は回復されたのですか。

佐藤「胃腸がやられていなかったのは、幸いですね。食事はふつうに摂ることができていましたし、当日の朝食もふつうに食べることができて。ただ、小松さんとコウジ(渡辺)さんはスタートまで自走するとのことでしたが、前日にコーチの紺野さんに相談したら、自走は絶対やめたほうがいいと。私自身は自走したい気持ちがあったので、はっきり言ってもらえてよかったです。結局私は、当日朝タクシーでスタート地点に向かいました」

—レース中は、どうでしたか?

佐藤「スタート時の位置どりは悪くなかったですし、走り出してからしばらくは、調子がいいと感じました。なんだか体が軽く感じるんですよ。ただ、パワーが出ない。1回目の登りでは軽く感じたまま、それなりの位置にいたはず。しかし平地に出ると、全然踏めないんですよ。体重も落ちているし、クルクル回しているだけになってしまう。そこで、後退して後ろのパックに入ることになりました」

—その後、渡辺さんが後ろから追いついてくるわけですね。

佐藤「2回目の補給の前に足が攣り始めて、さすがにペースも落ちて。慶佐次でコウジさんの集団に追いつかれました。そして、慶佐次から羽地へ入るところではコウジさんと二人っきりになって。コウジさんには、後ろに入ってとサインを出したんだけど、会話もなく、意地の張り合いなのか、コウジさんが辛かったのかはわからなかったんですけど」

渡辺「協調したくてもできなかったんです。回してペースを作っていく余裕が、そのときにはすでにありませんでした」

佐藤「そんなこんなでコウジさんとついたり離れたりしているときに、シクロワイアードの綾野さんがやってきて、声をかけてくれました。それでもう一度気持ちがあがりましたね。実は足攣りがひどかったのですが、それでも前々回や前回とは足の攣り方が違うことや、自分の体の可動域が以前とは違っていることを実感したりもできました。その後、少しでもタイムを縮めたいという欲が出てきて、少し踏んだんです。それで、コウジさんとは少しタイム差がついきました」


©Makoto Ayano, Cyclowired

—最悪の体調だったことを考えると、完走できてよかったといったところでしょうか。

佐藤「今回は、体調最悪でも完走はむずかしくないという手応えは、得られました。また、Evade Skinsuitはすごく効果的でした。まさに第二の皮膚といった感じです。あの謳い文句だてではない」

—面白いことに、佐藤さんが2014年に市民140kmを完走したときと、ほとんど同じタイムなんですね。

佐藤「あのときは97位で、今回は同じ時間で182位ですから、全体のレベルが上がっているんでしょうね。レース後の居酒屋でのタラレバトークが尽きないくらい反省点はあるけど、手応えもあった。来年もまた市民140kmに出て、取り返したいと思っています」

ロードレースの“戦闘服” Evade Skinsuitで完走を目指す>

●心配していた補給は問題なかった小松、一方で考えに考えた佐藤は……
—ところで佐藤さんは、事前に補給についていろいろ考えていましたが、例の塩はどうでした?

佐藤「塩のパケット、事前に試した限りでは、とても調子がよかったんです。ただ、レース本番では携行したドリンクのすべてに塩を入れてしまったんですね」

—ボトル全部、塩入りですか!

佐藤「集中して塩分を摂り過ぎましたね。飲めば飲むほど、水分が欲しくなるという悪循環で。今年のレースはそれほど暑くなかったので、それに助けられた面はあります。あとでトレーナーの方に聞いたら、ふつうに売ってるスポーツドリンクと水の併用で十分だと言われました。やはり王道が大事というか、自己流ではなく型にはまっていくところが大事なんだと感じました。今の自分は、守破離でいうところの“守”、つまり、学ぶ・真似るというレベルなんだなということですね」

—いちばん補給が心配だったのは、小松さんですよね。

小松「朝食はホテルで出たものを食べて、自走で向かうときにおにぎり食べて、それで十分でしたね。レース中は水分にマグオンを数個溶かしたものを飲みましたが、とくに問題なかったですね。27度は涼しいうちに入るし、アイアンマンと比べたら半分の時間だから、補給に関しては大丈夫だったと思います」

渡辺「私は逆に、ボトルを持ち過ぎたかなと思います。背中に2本、ボトルを入れてスタートしたので。そこはちょっと、バランスが悪かった」

—何度か出ている人でも、うまくいったり、いかなかったりするもんなんですね。

佐藤「PDCAを回していくこと。それがこのゲームのおもしろさなんだなと改めて感じました」

●サイクルロードレースは仲間がいるから成長できる
—ここまでお話を聞いていると、思うようにいったところと、いかないところ、それぞれあったとは思いますが、本番に至るまでの過程も含めて、皆さんツール・ド・おきなわのレースを楽しまれたようですね。そして、ぜひ来年もチャレンジしたいと。今から来年が楽しみですね。

佐藤「ツール・ド・おきなわに向けて、今回はトレーニングコーチもお願いして取り組んだことで、仕事をはじめとして、これからの人生に役立つなと感じることがたくさんありました。物事に対する柔軟性とか、考え方とか、仕事の段取りひとつとっても変わったり」

—日々の暮らしの中に、トレーニングやレースがあるわけですものね。

佐藤「自転車のトレーニングでよい循環をつくっていけば、仕事もよくなる。そう思っています」

—佐藤さんは、来年のおきなわはもう一度市民140kmとのことでしたが、どう過ごしていきますか?

佐藤「直近では、シクロクロスも楽しみです。今までのトレーニングが、どう生かされるのか。そして2019年は、まずニセコクラシックに出て、シマノ鈴鹿、富士チャレンジ、そしておきなわというふうにするといいかなと思っています。この数年のアマチュアライダーのトレンドです。そこからグランフォンド世界選に出る人も増えています。また、今のメンバーに加えて社内でフレッシュな人を巻き込みたいですね。フィッティングなどを通じて楽しく乗れる前提作りをして、最短距離で目標をクリアできるよう、お手伝いしたい」

—小松さんは、もしかしたらサイクルロードレースはもう十分と思ったりもするのかなと、勝手に想像していました。先ほど、来年も出たいとおっしゃっていたのは、少し意外な感もありました。

小松「そうかな、そうかもしれないですね。でも翌日のファンライドで、ロードレースにちゃんと向き合あえば、楽しいんだろうなと思いました。そして、例えば心拍の上下動はフィジカルの面で役に立ちますし、ロードバイクのテクニック上達にもつながるはずです」

—それほど、翌日のファンライドで他の出場者の皆さんと話した内容が、充実していたんですね。

小松「ハムスタースピンの福田さんに、まっすぐ走ることが重要であると言われて。“まっすぐいけば、まっすぐいけるんだ”と。今、それをすごく意識しています。2019年のスケジュールには、ツール・ド・おきなわが入りますし、1年の過ごし方も、変わるでしょうね。バイクの練習も増えるでしょう」

—渡辺さんも、あまりロードバイクに乗るイメージが無かった……と言ったら、失礼かもしれませんが。

渡辺「2019年は、ヒルクライムにも出ようかなと」

—おお!

渡辺「今回のチャレンジで、登りが楽しくなったのは事実です。登りは、登らないと速くならない。練習したおかげで走れるようになって、違う世界が広がったと思います。佐藤にも“登れたらなお楽しい”と、よく言われていましたし」

佐藤「コウジさんは3ヶ月でみてわかるくらいカラダを変えましたよね。僕は誰かのマネをすることでやるけど、コウジさんは自分でやったんでしょうね」

渡辺「自分だけで考えているわけではなくて、例えばMTBの平林さんとか、スペシャライズドのアンバサダーとお話をして、バックグラウンドを知ると刺激は受けますね。そして、もっとできるだろうと思う。ロードレースは好きではじめたわけではないから(笑)、自分で何か遊び要素を作らなきゃと思うんですけど、坂を登るとか距離を乗るといったことは楽しめる。それに、3人で走ることで、面白みも感じました」

佐藤「いろいろな人がいるから、刺激になりますよね。それぞれに、違うアプローチもあって。そして、仲間へのリスペクトを忘れずに“ヘタの横好き”を続けたいと思います」

Vengeでツール・ド・おきなわ優勝!紺野元汰さん独占インタビュー!

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佐藤 修平
スペシャライズドが提供する製品やサービスについて、その機能や特徴を販売店やエンドユーザーへと伝える「SBCU」のメンバーであり、フィッティングサービスを統括する。ツール・ド・おきなわでは、2014年に市民140kmを完走、2017年に市民210kmを完走。MTBやシクロクロスの経験が豊かで、生まれつきの「自転車バカ」を仕事にもっと活かしたい44歳。

渡辺 孝二
佐藤とともに「SBCU先生」として、販売店に向けて様々な商品説明やフィッティングの研修などを行う。いわばスペシャライズド・ジャパンにおける「知識の泉」のひとり。当ブログのMTB関連記事でも「コウジくん」として、たびたび登場。筋肉がつきやすいのが悩みで、今年はその点を意識したトレーニングに励み、効果が出てきたように感じる51歳。

小松 亮
スペシャライズド・ジャパン代表。一児と猫二匹のパパであり、サラリーマン社長であり、そしてアスリートと、三足のわらじを履く52歳。バイク180kmを含むアイアンマン・ディスタンスにチャレンジし、アイアンマン・ジャパンのエイジ優勝やハワイ・コナで開催されるアイアンマン世界選手権への出場経験をもつ。独走力には不安がないが、集団走行への慣れや補給が課題


Photo:🄫Ryuta Iwasaki

【筆者紹介】:須貝弦
万年ビギナー状態だが、それでも自転車で地元の里山をめぐることを心のヨリドコロとするフリーライター。「年に1度だけ、レースにも出ます」と書いていたが、2018年は目標としていたレースが台風で中止になり残念。

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