2016.09.21

とにかく軽く前に走り続ける、今どきの最新XCレース用タイヤ「FAST TRAK」

XCレースのトップレーサーが愛用する名タイヤ、「Fast Trak」を紹介します。

MTBクロスカントリー (XC)の世界トップに長く君臨するヤロスラフ・クルハヴィ(チェコ)を始め、スペシャライズドのグローバルチームにはXCに強いライダー多い印象がある。彼らはみんなこのXCタイヤを履いている。「Fast Trak」(ファストトラック)だ。

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このFast Trak、XCレース用と銘打ってあるが、まさにその通りの性能を味わえる。XCレースに参加したいなら、履いておきたいスタンダードタイヤだ。ひと漕ぎ目からすっと進む。とにかく走りが軽く、前へ前へと進みたがる。低めのブロックパターン、しなやかなサイドケーシング。こぎの軽さと走り続ける巡航性能が光る、速く疲れず走りたい人のチョイスだ。

これら特徴を作り出すのは、やはりしなやかなケーシングだと感じる。根っこが続くラフなセクションでも、タイヤ全体が適度にしなってグリップし、低く広いブロックパターンが紙やすりのようにコース表面に食らいつく。2.2というタイヤサイズも、適度なエアボリュームを楽しめるのでステキだ。

このしなやかさは一方で、空気圧の細かな変化は乗り心地を大きく変える。まず最低気圧の1.7barを試した。体重65kgで低い空気圧好きのボクでも、少しべたつく感じがしたが、2.0barにすると、とたんに走りは軽くなった。履いたのがアルミフレームのためこれ以上高くすると跳ね返りは強いかな、カーボンフレームであれば、もう少し高めにして走りの軽さを追求してもいいかもしれない。

その丸みのあるボディで、全方位にグリップは高い。コーナリングでのライントレースもスムーズだ。しなる一方で剛性は弱いわけではなく、スピードを出してもしっかり粘る。路面の荒れ具合、求めるスピード域とグリップ力を想定して、自分の体重と空気圧の関連性を探りだす試験を繰り返すのが面白い。

高い空気圧も楽しい。最高の3.7まで入れてみると(リムの適応空気圧もあるので注意を)、まるでロードバイクのように舗装路をころころ走る。このタイヤを履いてるならなら、まずは体験してみよう。日々乗るスタンダードタイヤとしても、ブロックの減りも少なく活躍しそうだ。パンプトラックでも路面を荒らさずするする走り良好だ。

基本的にレーシングXCタイヤなので、自然のワイルドなコンディションよりも、レースコースや常設パーク向けの性能。下りや荒れたトレール散策などを楽しむなら、別に紹介した「パーガトリー」をおすすめしたい。 下写真は、右がファストトラック、左がパーガトリーだ。そのブロックの高さの違いがこれで歴然。

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このFast Trak Controlは「Control ケーシング」という(名前の由来だ)60TPIのケーシングを使っている。S-Worksモデルより15%耐パンク性が高いそうだから、Fast Trak のウェブページに書かれたサイズ重量スペックを見比べながら、レースかライフスタイルか、目的に合わせて悩んでみるのがいいだろう。

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タイヤの名前に「2Bliss Ready」の略、2BRとあるのは、いわゆる「チューブレス レディ」仕様だということ。スペシャは 6Fattie (650b → シックスフィフティ ビー → シックス フ〜ティ → シックス ファティ)に代表される、こういうダジャレ感覚の効いたネーミングを最近さらっと繰り出してくる。このマークが目印だ。

現在、U23クラスのトップとして、東京五輪出場を目指し活躍するXCライダー、19才の平林安里さんもこのタイヤを気に入って使っている。安里さんの身体は大きくその走りもトルクフル。若さみなぎる走りが特徴の彼は、レースでもたまにControl バージョンを使うそう。「こっちの方が剛性が高くて、僕の走りにあっていると思います」。若くてパワーがあるって、ステキなことね。

【筆者紹介】:中村浩一郎
マウンテンバイクのライダーでぼんやり物書き。タイヤで言えば、丸みのあるしなやかな長距離系タイヤをゆっくりと使うのが好き。今回のレポートで、タイヤ圧を高くして乗ってみたんだけど、これは心地いいね。フルサスとかカーボンフレームでこのタイヤを使う人は、ぜひ試して欲しい。

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