最新のエアロロードバイク「S-WORKS VENGE ViAS」をつくった男、クリス・ユー インタビュー 後編

2015/10/30

最新のエアロロードバイク「S-WORKS VENGE ViAS」をつくった男、クリス・ユー インタビュー 後編

S-Works Venge ViASの開発責任者であるクリス・ユーのインタビュー後編です。

今回は、スペシャライズドの開発陣とプロ選手とのやりとりについて、職場環境と働き方、そしてクリスが考える自転車開発の未来について聞きました。

インタビュー前編はこちら:http://www.specialized-onlinestore.jp/contents/blog/detail/18

SPECIALIZED JAPAN(以下、SJ):難解なエアロダイナミクス研究とその過程や結果をマネジメントするクリスにとって、仕事で一番難しいことって何かな?

Chris Yu(以下、CY):正直に言うと、プロジェクト管理かな。それぞれのプロジェクトはとても専門的で技術的にも難しいし、大抵の研究者はそれをいくつも同時に進行させている。スペシャライズド製品ラインナップの幅広さを思い出してくれれば、研究対象の広大さは分かってもらえると思う。でも、風洞実験施設「ウィントンネル」のスケジュールや、CFD(数値流体力学)を行えるコンピューターの数は限られているんだ。

僕はいま6から7の製品開発プロジェクトを進めている。そのうち4つくらいがエアロ関連の最先端技術に関する研究で、将来の製品開発に有用かもしれないものなんだ。業界をリードするには、最先端の科学実験は不可欠だよ。

加えて、プロ選手との共同プロジェクトもある。プロ選手は本当に忙しいから、彼らの都合がよい日程に合わせる必要があるんだ。ウィントンネルや各施設のスケジュール管理も飛び込みで入ってくる。

各施設やリソースには限りがあるから、プロジェクトに優先順位をつけないといけないんだけど、やっぱり難しいよね。

SJ:クリスは多くのプロ選手と仕事をしているけど、特に仕事がしやすい選手は誰?

CY:そうだね、シュティバル(ズデネック・シュティバル。エティクス・クイックステップ所属)かな。あとは、クフィ(ミハウ・クフィアトコフスキー。同チーム所属)。彼らは自転車に対してとても情熱的なんだ。

残念だけど、長いプロ生活のなかで自転車への情熱を失う選手は少なくない。けれども、シュティバルやクフィは心の底からライドを楽しみ、自転車中心の生活を満喫している。そういう選手からのフィードバックは大概、良質なものであることが多い。特にシュティバルのバイクコントロールは最高峰のレースシーンでも一際秀でているから、その彼から得られる技術的なアイデアは貴重だよ。2人とも自身のフィーリングを的確に言語化して、伝えられる点もありがたい。なにより、彼らは最高に良いひとで、一緒に仕事をするのが楽しいんだ!

僕の仕事の多くが魅力的だと自分でも思うけれど、彼らプロ選手と関われることがもっとも素晴らしい。

エンジニアの多くは車や飛行機をデザインする。その対象は、機械やコンピュターモデルだよね。でも、僕の対象である自転車のエンジンは人間。それぞれがユニークな個体である人間を考慮して設計する必要がある。乗り手や求める乗り方はプロジェクトごとに毎回違うから、すべての企画は本当にユニークなものになる。飽きることがないよ。

SJ:ユニークな人材やプロジェクトがあふれているスペシャライズドだけど、クリスからみてスペシャライズドはどんな企業かな?

CY:一言で表現するなら「Passionate(情熱的な)」だね。

もしうちが、単に自転車をつくる会社であっても、ある程度良いプロダクトをつくれると思う。

でもね、情熱があるからこそ、僕らは手間や労力を惜しまないんだ。スペシャライズドは全社員が情熱をもって仕事に取り組み、また自転車がライフスタイルに根付いているからこそ、圧倒的な革新を実現できるんだ。

SJ:クリスにとって自転車の定義ってなに?

CY:まさに「Freedom(自由)」だよ!

人生には多くのストレスがあるけれど、そういったものから解放される。もちろん、ライド中にも、走るラインや交通状況、レース中なら戦術など、考えることが多い。でも、これらすべては、普段の生活から僕を解き放ってくれるんだ。生活における雑多な情報や不快な事情から思考を引き離してくれる。最高に自由だよ。

SJ:エアロダイナミクスは自転車の進化に大きく寄与しているけど、なにか「罪」はあるの?

CY:いまとなっては過去の話だけど、エアロの追及には常に「妥協」があった。バイクやホイールの空力特性を求めれば、重さや剛性あるいはハンドリング性能を犠牲にした。ヘルメットならば通気性能だね。

しかし、技術が進化したいま、その妥協は急速になくなりつつある。例えばS-Works Venge ViASは前作よりも空力面ではもちろん、剛性やハンドリングも圧倒的に進化している。妥協はゼロにはならないかもしれないけど、限りになくゼロに近づけるんだ。いまはその、未来への道の途中だよ。

SJ:未来の話でいうと、スペシャライズドは今年創立41年目。新しい一歩を踏みだす年だけど、バイクは今後どう進化するんだろう?

CY:これは個人的なアイデアだけど、自動車の設計思想に近づくと思う。フレームはもちろん、タイヤ、ホイール、コンポーネンツから電子系まで、さらなる性能のためにすべてが統合的にデザインされるはずだ。つまりすべてのパーツを、ひとつのパッケージとして設計するということ。S-Works Venge ViASはバイクからウェアまで、一貫した理念のもと開発している。次世代のバイクデザインあるいはプロダクションに一歩踏みだしたんだ。

でもそれも、もっとつっこんでできるはずだよ。より高いレベルの空力特性や操作性、パフォーマンスを引き出すためには、ライドに必要なすべての要素を統合的に研究・設計・開発する必要がある。僕たちはまだまだ進化の過程なんだ。

SJ:その進化はプロ選手や熱心なサイクリストにとって、間違いなく福音だよね。でも週末にちょい乗りする方、あるいは移動手段として自転車を活用する方にはどんな影響があるのかな?

CY:そうだね。スペシャライズドでは、レーシングバイクで培った技術をすべてのバイクやエキップメントに反映している。ツール・ド・フランスや世界選手権で勝つために育まれたテクノロジーは、いわゆるローエンド・モデルにも搭載される。

レースではより速く、より快適に走ることが勝利への絶対条件だよね。その実現のために僕たちが開発したバイクは、より速く、快適に乗り手を目的地に運ぶんだ。勝つために培った快適性や効率性が息づくバイクに乗れば、例えば東京都内を移動する際にだって、もっと速く、楽に目的地に辿り着けるんだ。もちろん時短につながるし、汗の量だって減るよ。その代わりにスピードは増し、笑顔が増えるはずだよ。

SJ:ありがとう!

関連記事:
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S-Works Venge ViASの開発責任者であるクリス・ユーのインタビュー後編です。

最新のエアロロードバイク「S-WORKS VENGE ViAS」をつくった男、クリス・ユー インタビュー 後編

今回は、スペシャライズドの開発陣とプロ選手とのやりとりについて、職場環境と働き方、そしてクリスが考える自転車開発の未来について聞きました。

インタビュー前編はこちら:http://www.specialized-onlinestore.jp/contents/blog/detail/18

SPECIALIZED JAPAN(以下、SJ):難解なエアロダイナミクス研究とその過程や結果をマネジメントするクリスにとって、仕事で一番難しいことって何かな?

Chris Yu(以下、CY):正直に言うと、プロジェクト管理かな。それぞれのプロジェクトはとても専門的で技術的にも難しいし、大抵の研究者はそれをいくつも同時に進行させている。スペシャライズド製品ラインナップの幅広さを思い出してくれれば、研究対象の広大さは分かってもらえると思う。でも、風洞実験施設「ウィントンネル」のスケジュールや、CFD(数値流体力学)を行えるコンピューターの数は限られているんだ。

僕はいま6から7の製品開発プロジェクトを進めている。そのうち4つくらいがエアロ関連の最先端技術に関する研究で、将来の製品開発に有用かもしれないものなんだ。業界をリードするには、最先端の科学実験は不可欠だよ。

加えて、プロ選手との共同プロジェクトもある。プロ選手は本当に忙しいから、彼らの都合がよい日程に合わせる必要があるんだ。ウィントンネルや各施設のスケジュール管理も飛び込みで入ってくる。

各施設やリソースには限りがあるから、プロジェクトに優先順位をつけないといけないんだけど、やっぱり難しいよね。

SJ:クリスは多くのプロ選手と仕事をしているけど、特に仕事がしやすい選手は誰?

CY:そうだね、シュティバル(ズデネック・シュティバル。エティクス・クイックステップ所属)かな。あとは、クフィ(ミハウ・クフィアトコフスキー。同チーム所属)。彼らは自転車に対してとても情熱的なんだ。

残念だけど、長いプロ生活のなかで自転車への情熱を失う選手は少なくない。けれども、シュティバルやクフィは心の底からライドを楽しみ、自転車中心の生活を満喫している。そういう選手からのフィードバックは大概、良質なものであることが多い。特にシュティバルのバイクコントロールは最高峰のレースシーンでも一際秀でているから、その彼から得られる技術的なアイデアは貴重だよ。2人とも自身のフィーリングを的確に言語化して、伝えられる点もありがたい。なにより、彼らは最高に良いひとで、一緒に仕事をするのが楽しいんだ!

僕の仕事の多くが魅力的だと自分でも思うけれど、彼らプロ選手と関われることがもっとも素晴らしい。

エンジニアの多くは車や飛行機をデザインする。その対象は、機械やコンピュターモデルだよね。でも、僕の対象である自転車のエンジンは人間。それぞれがユニークな個体である人間を考慮して設計する必要がある。乗り手や求める乗り方はプロジェクトごとに毎回違うから、すべての企画は本当にユニークなものになる。飽きることがないよ。

SJ:ユニークな人材やプロジェクトがあふれているスペシャライズドだけど、クリスからみてスペシャライズドはどんな企業かな?

CY:一言で表現するなら「Passionate(情熱的な)」だね。

もしうちが、単に自転車をつくる会社であっても、ある程度良いプロダクトをつくれると思う。

でもね、情熱があるからこそ、僕らは手間や労力を惜しまないんだ。スペシャライズドは全社員が情熱をもって仕事に取り組み、また自転車がライフスタイルに根付いているからこそ、圧倒的な革新を実現できるんだ。

SJ:クリスにとって自転車の定義ってなに?

CY:まさに「Freedom(自由)」だよ!

人生には多くのストレスがあるけれど、そういったものから解放される。もちろん、ライド中にも、走るラインや交通状況、レース中なら戦術など、考えることが多い。でも、これらすべては、普段の生活から僕を解き放ってくれるんだ。生活における雑多な情報や不快な事情から思考を引き離してくれる。最高に自由だよ。

SJ:エアロダイナミクスは自転車の進化に大きく寄与しているけど、なにか「罪」はあるの?

CY:いまとなっては過去の話だけど、エアロの追及には常に「妥協」があった。バイクやホイールの空力特性を求めれば、重さや剛性あるいはハンドリング性能を犠牲にした。ヘルメットならば通気性能だね。

しかし、技術が進化したいま、その妥協は急速になくなりつつある。例えばS-Works Venge ViASは前作よりも空力面ではもちろん、剛性やハンドリングも圧倒的に進化している。妥協はゼロにはならないかもしれないけど、限りになくゼロに近づけるんだ。いまはその、未来への道の途中だよ。

SJ:未来の話でいうと、スペシャライズドは今年創立41年目。新しい一歩を踏みだす年だけど、バイクは今後どう進化するんだろう?

CY:これは個人的なアイデアだけど、自動車の設計思想に近づくと思う。フレームはもちろん、タイヤ、ホイール、コンポーネンツから電子系まで、さらなる性能のためにすべてが統合的にデザインされるはずだ。つまりすべてのパーツを、ひとつのパッケージとして設計するということ。S-Works Venge ViASはバイクからウェアまで、一貫した理念のもと開発している。次世代のバイクデザインあるいはプロダクションに一歩踏みだしたんだ。

でもそれも、もっとつっこんでできるはずだよ。より高いレベルの空力特性や操作性、パフォーマンスを引き出すためには、ライドに必要なすべての要素を統合的に研究・設計・開発する必要がある。僕たちはまだまだ進化の過程なんだ。

SJ:その進化はプロ選手や熱心なサイクリストにとって、間違いなく福音だよね。でも週末にちょい乗りする方、あるいは移動手段として自転車を活用する方にはどんな影響があるのかな?

CY:そうだね。スペシャライズドでは、レーシングバイクで培った技術をすべてのバイクやエキップメントに反映している。ツール・ド・フランスや世界選手権で勝つために育まれたテクノロジーは、いわゆるローエンド・モデルにも搭載される。

レースではより速く、より快適に走ることが勝利への絶対条件だよね。その実現のために僕たちが開発したバイクは、より速く、快適に乗り手を目的地に運ぶんだ。勝つために培った快適性や効率性が息づくバイクに乗れば、例えば東京都内を移動する際にだって、もっと速く、楽に目的地に辿り着けるんだ。もちろん時短につながるし、汗の量だって減るよ。その代わりにスピードは増し、笑顔が増えるはずだよ。

SJ:ありがとう!

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