2016.02.24

中級者ブログSPECIALIZED 製品レビュー Vol.5 S-WORKS TURBO

スペシャライズドが自信を持って贈るロード用タイヤ、S-Works Turbo。ロードバイク中級者が使ってみると……それはとても「やすい」タイヤだった!?

バイクに関するあらゆるアイテムを開発するスペシャライズドは、当然タイヤでも独自の製品群をリリースしている。その代表格がクリンチャータイヤのS-Works Turboだ。自称・中級者の筆者が試してみたところ……そこには4つの良い「やすさ」が待っていた。

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1.はめ「やすさ」!


走行性能に直接関係はないけれど、このタイヤは非常にはめやすい。筆者のホイール(Zipp)に装着する際、タイヤレバーを使わずにほとんど手だけで作業を終えることができた。ホイールとの相性かもしれないと思い、念のためMavicの手組ホイールでも試してみたが、こちらもやはり(Zippよりいくぶんキツかったにせよ)はめやすかった。
交換のたびに親指を腫らしてしまうようなきっついタイヤが少なくないなか。練習でのパンクはもちろん、エンデューロなど1分1秒を争う本番でのパンクにも素早く対応できるのは、ひじょうにありがたい。

2.乗り「やすさ」!

そして走り出してすぐに感じたのが直進性の高さ。ハンドルがふらふらせず、車体がとてもまっすぐ進む(ように感じられる)のだ。むしろTurboを履いたことで、いかに自分がふらついていたのか気付かされた。
また、乗り心地もバツグンで---ありがちな表現で恐縮だが本当にそうだからしょうがない---高級チューブラータイヤ並に細かい振動を吸収してくれた。
推奨空気圧は7.0-8.0bar。体重62kgの筆者の場合、7.3barあたりがちょうどよい乗り心地。空気圧はやや低めに設定するのがベストかもしれない。

3.転がり「やすさ」!

タイヤは路面との摩擦が大きいほどグリップするが、摩擦が大きすぎると転がる力を抑えつけてしまう。すなわちグリップ力とスムーズな転がりは相反する関係にあるのだが、このTurboは、どちらも高いレベルで両立させていた。いわゆるモチモチ感とコロコロ感、両方がしっかり出ているのだ。「それはできすぎだろ!」と思われる方のために正確に表現すると、両方の特性がありつつも路面の状況次第でモチモチとコロコロ、どちらかの特性が強めに出る……といったところ。
スペシャライズドはコンパウンド(タイヤのゴム)から自社開発したとのことだが、この高性能ぶりは自分でも「できすぎだろ!」と思わずにいられなかった。

4.減り「やすさ」!?

だが、このままでは完璧すぎるぞTurbo! なんぼスペシャライズドのサイトでもベタ褒めじゃイカン! どこかにカラクリがあるはずだ! と、元来の疑り深さを発揮した筆者が血眼になって欠点を探してみたところ(ムリに探す必要はないんですが)、「Turboは減りやすい」というウワサを耳にした。なるほど、超高性能な代わりに寿命が短い。これなら物事のバランスが取れているし、ブログとしてのオチもつけやすい!


と、納得しようと思ったのだが、そもそも「減りやすい」と言われていたのはTurboの旧モデルで、タイヤ中央のトレッドがわかりやすく削れていくことから「減りやすい」イメージを持たれたようだ。しかし現行モデルではスペシャライズドもそんな評判を聞きつけたのか、「そこまで言うならとってやる!」とばかりに中央のトレッドをキレイさっぱり無くしてしまった(ならばどうしてトレッドがあったのかという話になりますが、あくまで筆者の想像です)。


なので正直、減り具合はよくわからない。実際の走行感も自分の脚では「言われてみれば」レベルで、300km走った程度では明らかな減りもなかった。乗り始めの性能があまりに良すぎるから、ちょっとでも性能が低下したら「すごく減った」ように思える、というのはあるかもしれないが……。この点に関しては、もっと走りこまないと結論が出なさそうだ。

未走行のタイヤ表面。中央はスリックで、サイドにトレッドがある。


300km走行後のタイヤ表面。ほぼ減っていないようにみえる。

5.値段の「やすさ」!?

最後に、Turboは1本7,200円(税込)と決して安い買い物ではない。しかし、お世辞ではなく自分がこれまで使ってきたクリンチャータイヤのなかではNo.1の爆性能。そして定番のロードタイヤがどれもじつは定価6,000-7,000円台な状況を踏まえると、じゅうぶんに「安い」のだ。
だが、やはり気楽に何本も買える値段でないのも事実。練習だけでガンガン消耗させてしまうのはもったいない。新品を「決戦用クリンチャータイヤ」としてレースで卸し、もっともおいしい状態で激走。少々表面が減ってから練習用タイヤとして寿命をまっとうさせる、というのが中級ライダー的にベストな用法ではないだろうか。

クリンチャータイヤの性能が年々上がり、レースで使うことがまったく珍しくなくなっている今日この頃。チューブラータイヤに限りなく肉薄した最高峰のS-Works Turboは、「決戦用」クリンチャータイヤというジャンルを決定づける1本になるかもしれない。

【番外編】S-Works Turbo SW 28C

今回のレビューで使用したのはTurboの24C。ちょっと前まではロードタイヤは細めが当たり前、19Cなんてのもふつうにあったが、研究が進んだ近年では様々なバランスから25Cがベストではないか、などと結論めいた意見が出てきている。じつは太いタイヤの方が変形しづらく、抵抗が少なく済む、などのメリットがあるようだ。
そういった意味でもTurboの24Cはバツグンの性能だったのだが、今シーズンのTurboにはそれを上回る極太サイズ28Cが追加された。商品名の「SW」とはS-Worksの略ではなく、「Super Wide」の略なのだ(いや、違うか)。

ロードバイクに28C!? いくら太いほうが有利と言っても、ここまで太いと重量もかなり増えているだろうし、何より装着できるフレームが限られてしまう。
事実、筆者のカーボンフレームバイクには太すぎて装着できず、サブのクロモリフレームバイクに装着することになった(購入を検討されている方は、かならず事前に確認しましょう)。
走りだす前からとんでもないタイヤだなと面食らいつつ、しかしいざ走り始めてみると……重さはさほど感じられず、それよりも安定感がハンパなく増していて、荒れた道やカーブでも24C以上に安心して走れた。カンタンに言えば、両手放しでどこまでも走れるような感じだ(実際にやっちゃダメですが)。たしかにこれは太いタイヤでしか成し得ないメリットと思える。また、推奨6barという空気圧の低さも手伝って、振動吸収性はかなり高かった。24Cと同じかそれ以上だろう。


写真下が28C。上が24C。

一方、ゼロ発進時や急加速時にはやはり少々重く感じた(実測重量は271g。24Cで225g)。ただいったんスピードにのってしまえば気にならないので、急加速のないコースや、アップダウンの少ないロングライドならば、28Cもじゅうぶんに選択肢に入ると思う。というか一定のスピードでひたすら平坦を走るような場合は、28Cの方が遠心力と安定感の面で有利かもしれない。そういったコースに向けて作られたエアロフレームVenge Viasと組み合わせたら、最高にきもちよさそうだ。

いずれにせよ自身のバイクや出場レースに合わせて、24Cでも28Cでも、このTurbo。当ブログ的にはとてもおすすめし「やすい」タイヤなのだった。

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【筆者紹介】成田ケンイチ
小学館自転車部所属。重度の花粉症なので、この季節は脚が峠から遠ざかります。決して登りがキライだからじゃなくて……。

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