中級者によるSPECIALIZED 製品レビュー Vol.3 AUDAX

2016/01/07

中級者によるSPECIALIZED 製品レビュー Vol.3 AUDAX

ライダーが尋常ならざる長距離を走るとき、背負うのは予備のチューブであり、妥協との葛藤であり、そして脈々と続くロードバイクの歴史だ。

短時間の速さではなく長時間のタフさが求められる現代のアドヴェンチャーにおいては、シューズもその性格を大きく変える。

「Audax」とは、主催者が設定したコースを制限時間内に走りきる競技のこと。その距離は200qから1000q以上にもおよび、日本でもにわかに盛り上がっている「ブルべ」とほぼ同種の過酷な競技といえる(正確に言えば両者は別のカテゴリーらしいが、本場ヨーロッパから遠く離れた日本ではとりあえず)。

そんな「Audax」をそのまま名に冠したこのシューズ。当然、追求したのはロングライドに向けた耐久力であり快適性だろう。短い期間ながら、そのあたりの性能をさぐってみた。

耐久性−−−ちょっとした足のアーマー


今回の累計走行距離は500qに満たなかったので、1ヶ月や1年乗り込んでの耐久性、タフネスについては言及できそうにない。しかしこの短期間でもシューズ全体が非常に強固で、「ひとつのかたまり」のように作られていることはよくわかった。革の継ぎ目をできるだけ排除していて、革自体も部分的にかなり厚く硬くなっているのだ。走行中にわざと足をぶつけることまではしなかったが、いろんな方向からシューズに衝撃を与えてみても、足へのショックはかなり軽減されていた。

とくにトウ付近は強固に作られており(別の素材で補強されているのかもしれない)、指で押してもほとんどへこまなかった。ぶつけがちなつま先は完璧に守られているといっていいだろう。これであれば長時間のロングライド、そして長期間の使用でも、外的要因によるトラブルはほぼ心配ないと思えた。

「歩」行性が非常に高い

じつはAudaxでいちばん気に入った点は、その歩きやすさだ。「ロードバイク用のシューズでなぜ歩くのか」という方のために説明すると、長時間のライドには休憩が必要で、現代日本における休憩ポイントといえば、そう、コンビニ。店内に入って補給食やドリンクを買い(ときに用も足し)、またバイクに戻る。この一連の歩行が、歩きにくいシューズだとわりにストレスだったりするのだ。

しかしAudaxは踵側のヒールトレッドが厚めに作られているためか、ビンディングと踵の高さがちょうど良く、さらにすべりにくいので−−−−あのツルッ!がなかった−−−−想像以上に快適に歩けた。トラブルにより急きょ輪行に切り替えるときでも、この歩きやすさは歩道や駅構内で助けになるだろう。また、ヒールトレッドはすり減ったら交換可能とのこと。長期使用を視野に入れたサポートもありがたい。

筆者の特殊な足事情により?

走行中の履き心地もきわめて快適、と言いたいところだがここは一点だけ不満があった。ベロが足首に強く当たり、少し違和感が出てしまうのだ。一番上のストラップが幅広で、かつ前述した革の硬さのせいか、どうしてもベロが上に反らず足首の前側を圧迫してしまう。ただそれでもBoaダイヤルをゆるめにセットし、50q、100qと距離をこなしていくと徐々に気にはならなくなった。ダイヤルをゆるめるのが正解なのかは疑問だが、そもそも筆者は甲高であると声高に訴えたい(シューズだけに韻を踏み……って前回に続いてしつこいですね)のと、ティンコフ・サクソの選手が当シューズをジロ・デ・イタリア2015で使用した事実から、筆者が特殊すぎる可能性は否めないのだが。念のため、購入を考えている方にはじゅうぶんな試着(ただ履くだけでなく足首を前後に深く曲げてみる等)をオススメする。

それ以外は、タイトすぎない履き心地とカーボンソールの適度なしなり(公式リリースによるとS-Works 6の硬度指数が13.0のところAudaxは10.0とのことだが、まさにその通りの感触!)で、100qを超えても足の裏の痛みやしびれは一切なく、疲れにくかった。いままでは比較的硬いシューズを履くことが多かったが、筆者の平均的(あるいは以下)な脚力であれば、ブルベと言わず2〜3時間ぐらいのレースでも、これくらいの方が最後まで足を残せるかもしれない。そう気づかせてくれたことは大きな発見だった。

オレンジ色のニクいヤツ

そしてAudaxはワンポイントがいちいちニクいシューズだ。トウ側のストラップのクリップには小さな書体で「Audax」と刻まれ、一番上のストラップには、めくると裏側にこれまた「Audax」と描かれている(こんなの履く本人しか見ませんよ!)。そしてソール横の赤いアクセントと、そこに記された「Since 1974」(スペシャライズドが設立された年)の文字。デザインが二の次になりがちなロードバイクシューズにおいて、こういった芸の細かさは所有欲を刺激するし、ロードレースシーンに確固たるファッションの歴史があることを実感させてくれる。カラーはブラックとホワイトの二種。

と思ったら嗚呼! Audaxのニクさはまだ終わりではなかった。たまたまスペシャライズドの本国サイトをのぞいたら……USA版Audaxには、なんとオレンジカラーがあるではないか! 一番下のストラップだけホワイトになっているのが、また気が利いている。国内未発売とのことだが、ぜひとも販売していただきたい。う〜ん、ニクい。

「AUDAX」、その名に偽りなし

この頑丈さと歩きやすさは、なにかで体験した気がするんだけどなんだっけ? と考えていたら思い出した。いわゆるSPDシューズ(SLじゃないやつ)に似ているのだ。MTBやシクロクロスなど地面に足をつけることが多い競技で使われる、タフさ重視のシューズである。しかし同じくらいタフで歩きやすくても、Audaxはしっかり3つ穴。SPD-SLやスピードプレイなどのロードバイク用ビンディングに対応しているので、より効率よくペダリングができる。

瞬間的な速さは不要で、長時間をマイペースで走りきれる快適性、トラブルに対応できるタフさがあればいい。そんなシューズを求めるライダーにはうってつけの一足(ティンコフ・サクソの選手もきっとそんな思いで履いたのではないか)。もちろんこの冬にしっかり長距離を走り込んでベースアップしたい(でもなるべくラクにクールに)、という人にも最適だろう。それはほかでもない、筆者のことですが。

Audax をチェック > 

【筆者紹介】:成田ケンイチ
この年末年始、どれだけ走り込めるかは天候や体調以上に「嫁の都合」がカギを握っているフリーライター。それはラルプ・デュエズより険しい。小学館自転車部所属。

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2016/01/07

中級者によるSPECIALIZED 製品レビュー Vol.3 AUDAX

ライダーが尋常ならざる長距離を走るとき、背負うのは予備のチューブであり、妥協との葛藤であり、そして脈々と続くロードバイクの歴史だ。

中級者によるSPECIALIZED 製品レビュー Vol.3 AUDAX

短時間の速さではなく長時間のタフさが求められる現代のアドヴェンチャーにおいては、シューズもその性格を大きく変える。

「Audax」とは、主催者が設定したコースを制限時間内に走りきる競技のこと。その距離は200qから1000q以上にもおよび、日本でもにわかに盛り上がっている「ブルべ」とほぼ同種の過酷な競技といえる(正確に言えば両者は別のカテゴリーらしいが、本場ヨーロッパから遠く離れた日本ではとりあえず)。

そんな「Audax」をそのまま名に冠したこのシューズ。当然、追求したのはロングライドに向けた耐久力であり快適性だろう。短い期間ながら、そのあたりの性能をさぐってみた。

耐久性−−−ちょっとした足のアーマー


今回の累計走行距離は500qに満たなかったので、1ヶ月や1年乗り込んでの耐久性、タフネスについては言及できそうにない。しかしこの短期間でもシューズ全体が非常に強固で、「ひとつのかたまり」のように作られていることはよくわかった。革の継ぎ目をできるだけ排除していて、革自体も部分的にかなり厚く硬くなっているのだ。走行中にわざと足をぶつけることまではしなかったが、いろんな方向からシューズに衝撃を与えてみても、足へのショックはかなり軽減されていた。

とくにトウ付近は強固に作られており(別の素材で補強されているのかもしれない)、指で押してもほとんどへこまなかった。ぶつけがちなつま先は完璧に守られているといっていいだろう。これであれば長時間のロングライド、そして長期間の使用でも、外的要因によるトラブルはほぼ心配ないと思えた。

「歩」行性が非常に高い

じつはAudaxでいちばん気に入った点は、その歩きやすさだ。「ロードバイク用のシューズでなぜ歩くのか」という方のために説明すると、長時間のライドには休憩が必要で、現代日本における休憩ポイントといえば、そう、コンビニ。店内に入って補給食やドリンクを買い(ときに用も足し)、またバイクに戻る。この一連の歩行が、歩きにくいシューズだとわりにストレスだったりするのだ。

しかしAudaxは踵側のヒールトレッドが厚めに作られているためか、ビンディングと踵の高さがちょうど良く、さらにすべりにくいので−−−−あのツルッ!がなかった−−−−想像以上に快適に歩けた。トラブルにより急きょ輪行に切り替えるときでも、この歩きやすさは歩道や駅構内で助けになるだろう。また、ヒールトレッドはすり減ったら交換可能とのこと。長期使用を視野に入れたサポートもありがたい。

筆者の特殊な足事情により?

走行中の履き心地もきわめて快適、と言いたいところだがここは一点だけ不満があった。ベロが足首に強く当たり、少し違和感が出てしまうのだ。一番上のストラップが幅広で、かつ前述した革の硬さのせいか、どうしてもベロが上に反らず足首の前側を圧迫してしまう。ただそれでもBoaダイヤルをゆるめにセットし、50q、100qと距離をこなしていくと徐々に気にはならなくなった。ダイヤルをゆるめるのが正解なのかは疑問だが、そもそも筆者は甲高であると声高に訴えたい(シューズだけに韻を踏み……って前回に続いてしつこいですね)のと、ティンコフ・サクソの選手が当シューズをジロ・デ・イタリア2015で使用した事実から、筆者が特殊すぎる可能性は否めないのだが。念のため、購入を考えている方にはじゅうぶんな試着(ただ履くだけでなく足首を前後に深く曲げてみる等)をオススメする。

それ以外は、タイトすぎない履き心地とカーボンソールの適度なしなり(公式リリースによるとS-Works 6の硬度指数が13.0のところAudaxは10.0とのことだが、まさにその通りの感触!)で、100qを超えても足の裏の痛みやしびれは一切なく、疲れにくかった。いままでは比較的硬いシューズを履くことが多かったが、筆者の平均的(あるいは以下)な脚力であれば、ブルベと言わず2〜3時間ぐらいのレースでも、これくらいの方が最後まで足を残せるかもしれない。そう気づかせてくれたことは大きな発見だった。

オレンジ色のニクいヤツ

そしてAudaxはワンポイントがいちいちニクいシューズだ。トウ側のストラップのクリップには小さな書体で「Audax」と刻まれ、一番上のストラップには、めくると裏側にこれまた「Audax」と描かれている(こんなの履く本人しか見ませんよ!)。そしてソール横の赤いアクセントと、そこに記された「Since 1974」(スペシャライズドが設立された年)の文字。デザインが二の次になりがちなロードバイクシューズにおいて、こういった芸の細かさは所有欲を刺激するし、ロードレースシーンに確固たるファッションの歴史があることを実感させてくれる。カラーはブラックとホワイトの二種。

と思ったら嗚呼! Audaxのニクさはまだ終わりではなかった。たまたまスペシャライズドの本国サイトをのぞいたら……USA版Audaxには、なんとオレンジカラーがあるではないか! 一番下のストラップだけホワイトになっているのが、また気が利いている。国内未発売とのことだが、ぜひとも販売していただきたい。う〜ん、ニクい。

「AUDAX」、その名に偽りなし

この頑丈さと歩きやすさは、なにかで体験した気がするんだけどなんだっけ? と考えていたら思い出した。いわゆるSPDシューズ(SLじゃないやつ)に似ているのだ。MTBやシクロクロスなど地面に足をつけることが多い競技で使われる、タフさ重視のシューズである。しかし同じくらいタフで歩きやすくても、Audaxはしっかり3つ穴。SPD-SLやスピードプレイなどのロードバイク用ビンディングに対応しているので、より効率よくペダリングができる。

瞬間的な速さは不要で、長時間をマイペースで走りきれる快適性、トラブルに対応できるタフさがあればいい。そんなシューズを求めるライダーにはうってつけの一足(ティンコフ・サクソの選手もきっとそんな思いで履いたのではないか)。もちろんこの冬にしっかり長距離を走り込んでベースアップしたい(でもなるべくラクにクールに)、という人にも最適だろう。それはほかでもない、筆者のことですが。

Audax をチェック > 

【筆者紹介】:成田ケンイチ
この年末年始、どれだけ走り込めるかは天候や体調以上に「嫁の都合」がカギを握っているフリーライター。それはラルプ・デュエズより険しい。小学館自転車部所属。

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