2017.10.20

スペシャライズド・ジャパン代表 小松のコナへの挑戦 Vol.4

遂にレース本番、期待と不安が入り混じる中、目標を達成することはできたのか?
トライアスロンの聖地KONAに魅せられた男のレースレポートをご報告します。

10月12日(木)に所謂Welcome partyが行われた。いつものことだが、世界各国のIronman raceでトップ3%以内でゴールしているアスリートの息吹を感じると、ぞくぞくするし、また来年も戻って来たいと強く思う。ハワイ独特のFire danceの太鼓の音が、レース前の高揚感を煽る。いよいよスタートだ。

Swim、Bike、Runのそれぞれの目標タイムを1時間10分、5時間45分、3時間45分とそれぞれコースマップに示して、家族が応援しやすくしておいた。炎天下の中14ヶ月の息子の世話をしながらの応援なので、レース展開が狂うと迷惑だ。

10月13日(金)は夜9時就寝、レース当日の朝4時までぐっすり眠ることが出来た。男子エイジのスタートは7時5分。6時45分頃にSwimスタート地点の隣にあるキングカメハメハズコナビーチホテルの海岸で10分ほどアップする。体調はすこぶる良い。先頭から3列目くらいの位置でスタートラインに並ぶ。レース戦略は、皆生と同じく80%の力を最後まで出し切ること。

キャノン砲がスタートを告げる。場所取りもよく、時々左右の選手にぶつかったりするが周りの泳力が似通っていたためそれほどストレスなく進む。左側で呼吸をすると朝日がまぶしい、今は涼しいが、日中は暑くなるだろうと余計なことを考える。普段3.8Km泳ぐと最後のほうは肘が立たなくなり推進力が全く生まれなくなるのだが、1週間KonaのSwimコースで泳いだ成果が出た。ゆったりとしたペースで疲れもなくSwimを1:08:32でフィニッシュ。幸先よし。

Bikeスタート。KailuaからHawiの町まで90KM北上し、折り返すコース。GPSの走行データよりわかるとおり、アップダウンばかりで平坦な箇所が全くない。30度を超える灼熱の地でひたすらペダルを高出力でこぎ続ける能力のみが求められる。自分のバイク脚力は国内ではそこそこだが、このKONAの地では平均以下なので、抜かれてばかりいる。それでも、あせらず自分の感覚だけを頼りに80%の力で進む。

2年前のコナではBikeの60KM地点で補給が出来なくなり潰れた。頭の片隅には当然その悪夢があるので、今回その地点を順調に越えると正直ほっとした。不思議なことに、北上しているのにも係わらず、風向きが追い風になったり向かい風になったりしている。ハワイ島特有なものであろう。

Hawiを折り返すと約20KMは超高速の下り、風もかなり強い。バイクが吹っ飛ばされないよう注意しながら進む。130KM地点くらいからバイクフィニッシュまではほぼ向かい風。スピードも出ないし、熱さのため頭もくらくらし、心も萎えてくる。バイク終了予定時間の14時までになんとか帰り着くようひたすらペダルをこぐ。最後の10KMは本当に苦しくなってきたため、ランに備えてサイクリングペースに抑え5:38:41でフィニッシュ。予定よりちょっと早い。80%の力でここまで来たが、疲労度は想像以上だ。フルマラソンを、80%ペースをキープできるか?不安がよぎる。

Runをスタート。最初の2KMは10分でクリア、キロ5分のペースだ。よし80%キープできている、これを21回やればいいのだ。エイドステーションでは歩いて足を休め、コーラで水分補給、氷をレースウエアに入れて少しでも体を冷やす。他の選手よりもずっとエイド休憩は長いが、このサイクルでないと精神的にもきつい。エイドでの休憩も考慮してこのままいけば目標の3時間45分は可能だ。

海外沿いのアリドライブを8KM 南下し折り返すコース、ところどころ日陰もあるのでかなり走りやすい。16KM地点、家族の声援を背に、クイーンKにむかう。ここからが勝負だが、明らかに足取りが重くなってきた。さすがにキロ5分は維持できない、5分20秒、30秒、40秒とどんどん落ちていく。前半の水分取りすぎがたたり、胃が悲鳴をあげて入る、エイドでもほとんど補給は出来ない。補給のためでなく、休む理由を正当化するために約2KM毎のエイドまでがんばる。日が暮れてきた。ランの目標タイムには到底及ばなくなっている。

とにかく真っ暗になる前に、息子が寝てしまう前にゴールしなければ。

ゴール直前で家族が迎えてくれていた。ようやく終わった。

ランは4:10:22でゴール。総合タイムは11:08:32、約2,400人の出走者中1,106番。

宿舎にもどり明るい光に照らされた僕の顔を見て妻が一言。「目の下がくぼみ、骸骨みたいになっている。何でそんなになるまで、やるの?」 多分この質問にはアイアンマンをやっている限り答えることが出来ないだろう。理由などないのだ。このKONAの地に来ている多くのアスリートがレースの苦しい記憶が頭にも体にも生々しく染み付いているのにも係わらず、翌日のAward partyを終える頃には来年もこの地に戻ってくることを誓っているのだ。

極寒の冬も、蒸し暑い夏の時期も、平日も一般の人がまだ寝ている時間からトレーニングに励む。

誰にも強制されず自分の意思で、トライアスリートの聖地KONAに再び戻るために。

関連記事:
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