2021.03.24

The Beta Tests - Stumpjumper EVO Review

The Beta TestsによるStumpjumper EVOレビュー。
毎度お馴染みスペシャの山の人の解説を交えてご紹介していきます。

MTBメディアの代表格で、毎年恒例のBible of Bikesで有名な Bike Magazineが、ウェブをメインにしたメディアの BETAとして生まれ変わりました。お馴染みのメンバーでBible of Bikes改め、The Beta TestsとしてYouTubeに続々とレビューが上がってきていますが、Stumpjumper EVOは彼らのお気に入りバイクのひとつだったようです。

毎度お馴染みスペシャの山の人の解説を交えてご紹介していきます。

いかなるトレイルも手なずける新しいStumpjumper EVOについて詳しく>

最近のトレイルバイクは、ジオメトリー調整を謳い文句にしていますが、実際に変えられる範囲はごくわずか。しかしStumpjumper EVOは、ジオメトリーを大幅に変えられるバイクです。ヘッドセットには3種類の角度に変えられるアッパーカップが付属し、ヘッドアングルを63度から65.5度の範囲で選べます。また、チェーンステーのチップを回転させることで、BBハイトをハイとローの2種類に変更できます。つまり、計6種類のジオメトリーを選べることで、走るフィールドや好みの走り方に合わせてバイクの乗り味をチューニングできます。

 

例えば、それほど荒れておらず、平坦気味なトレイルを普段走るときは、BBハイトを上げ、ヘッドアングルを立たせ、週末にバイクパークやより激しいトレイルを走りに行くとなれば、簡単に変更できるから便利です。撮影のときは立たせ気味のセッティングで走りましたが、ダウンヒルトレイルを走るときにもっとも寝かせて下げたジオメトリーにセットしたら、驚くほど楽しめました。地面にピタッとへばりつくのですが、バイクを振り回すように走れるし、安心感を高めてくれました。その走りから、テストバイクの中で特に気に入った1台でした。

 

また、用意されたジオメトリーガイドはとても便利で、ヘッドセットとチェーンステーのジオメトリーを変えると、それがフレーム全体にどう反映されるかを数値で確認できます。さらに、ジオメトリーの各組み合わせに適した地形や走り方まで確認できます。その上でサイズを6種類も用意したというのは、スペシャライズドがライダーを考えている証拠でしょう。

スペシャの山の人の解説
MTBを選ぶ上で一番大切なことは、自分の体格と、目指すライディング、乗る場所にあった正しいサイズを選ぶことです。ただなかなか自分に適したジオメトリーが分かる人は少ないかもしれません。Stumpjumper EVOはモダンなMTBのジオメトリーを全て試せる貴重なバイクです。また、乗る場所はスキルレベルの向上に合わせてジオメトリーを変化させられるので、ライダーの成長に合わせてとても長く楽しめる画期的なモデルになっています。

Stumpjumper EVOは数年前に、アグレッシブなアルミトレイルバイクとして登場し、その後すぐにカーボンモデルも用意されることとなりましたが、オールラウンダーとは言えませんでした。

 

今回の新型は、キネマティクスとジオメトリーが大幅に進化しており、登坂性能の良さは期待通りでした。ペダリング性能は確実に進化していて、急な上り以外でコンプレッションを強めたクライムモードに切り替える必要はありませんでした。

 

また、ショックは手の届きやすい場所に配置されているので、走りながらモードを簡単に切り替えられる点が便利でした。

 
スペシャの山の人の解説

今までのStumpjumperはリニアなサスペンション特性であり、アグレッシブなライディングが主流になっているトレンドから外れてしまっていたのは事実です。トレイルの途中で立ち漕ぎで数ペダル入れたい時などで、サスペンションが上下にボビングしてしまい、思うように加速できないのが難点でした。また大きな衝撃でボトムアウトしてしまう傾向にありアグレッシブなライダーからすると物足りなさがありました。

今回のStumpjumper EVOはEnduroと類似した適度にプログレッシブなサスペンション特性になっているため。ランプアップが急なリアサスペンションのボリュームスペーサーに頼らずに、適度なプラットフォームでメリハリの効いた、アグレッシブな走りが楽しめます。
 

下りの性能は、このトラベル量のバイクからは想像もつかないほどすばらしく、自然な走りを楽しめました。ジオメトリーを変えながら走行しましたが、どの組み合わせを選んでも、走りは多少異なるものの最高でした。調整式ジオメトリーを採用したバイクは、どこかに妥協が生じがちですが、このバイクではそれを感じませんでした。

 

ただ、シートアングルはもう少し立たせた方が良いかもしれません。トレイルバイクというより、正統派のオールマウンテンバイクといえる1台です。ジオメトリーを下り寄りの組み合わせにセットすると、エンデューロの領域も見えてきます。

 

オールマウンテン。エンデューロバイクの台頭で死語になってしまっていた言葉が久しぶりに出てきました。Stumpjumperのジオメトリーの「6変化」を考えると、正にオールマウンテンと呼ぶのがふさわしいバイクです。

 

 ブランド側の想定と、乗り手が選ぶ走行フィールドや走らせ方が見事に一致しています。スペシャライズドは、顧客ベースの巨大さゆえ大幅な仕様変更には慎重ですが、これは過去のモデルとはガラッと違います。フィットや仕上げはいつもながらすばらしいですし、ディテールも見落とされていません。S-Worksモデルはリンクまでカーボンを採用し、専用工具を使わずに取り外せる形状で作られているので、メカニックのことも考慮されていると感じました。100万円近いモデルですから、電動ワイヤレスドライブトレインやAXS ドロッパーポストなど、どのパーツを見ても特別な仕様だとわかります。選び抜かれたパーツとフレームが相まって、このバイクのすごさが伝わります。

 

また、拡大されたSWAT ストレージに22オンスのブラダーを入れられるので、ウォーターボトルを1本だけ持っていけば、ライド中に補充できます。見た目はクリーンで、走行音は静かです。フロントのButcher タイヤのラバーはとても柔らかく、どんな路面にも食いつきます。 リアのEliminator タイヤも秀逸です。スペシャライズドは、ケーシングの強度などにこれまで問題を抱えていましたが、これらのタイヤはとにかくすばらしかったです。

 

今までのタイヤは正直いって好きではありませんでしたが、今回のタイヤはとても良いので、騙されたと思って使ってほしいです。間違いなく言えるのは今売っているタイヤの中で一番かっこいいタイヤだと思いますが、いかがでしょう?

 

Stumpjumper EVOの性能は、どのグレードを選んでもまったく同じライドクオリティーを得られます。新型Stumpjumper EVOは、短所の見つからない、Stumpjumper史上もっとも多才な走りが楽しめる1台です。

 

多くのブランドがLevo SLなどのe-MTBに開発を集中させる中、スペシャライズドが送り出したStumpjumper EVOはトレンドを全て取り込み、ジオメトリーの幅を増やすことで長く楽しめるモデルになりました。正直これだけ出し惜しみが一切ない完成度の高いMTBは今までになかったかと思います。

 

E-MTBが欲しい人、XCレースに出たい人を除く全ての人にお勧めのモデルです。

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